動物会議ができるまで~その1~

公開日 2014年08月15日

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公演まであと6週間あまりとなった「動物会議」。

どんな世界が繰り広げられるんだろう?チケット買ったけど、「コーラス隊」に応募したけど、どんな風に参加するんだろう?
まだまだピンと来ない方のために、新感覚コンサートミュージカル「動物会議」ができるまで、少しずつこのコーナーでお話しましょう。

ことの始まりには2人のおじさんが登場します。

ひとりは19世紀末にドイツに生まれたKおじさん。このおじさんは、繊細で頑固でマザコンで皮肉屋で(文責なし、ただし伝記もの参照)、どうしたわけか、超一流の詩や小説と超一流の児童文学を書いて、人気者でした。

第二次世界大戦中、ナチスはたくさんの作家を弾圧し、焚書(方針に合わない本を焼いて見せしめにするんですね、なんてこった)が行われました。このKおじさん、大胆にも自分の書物が焼かれているのを見に行ったそうです。途中で「あっ、Kおじさんだ」と見つかってそそくさと退散したそうですが、自分の著書が焼かれるなんて、どんな気持ちだったでしょうね。

たくさんの芸術家がナチスの暴政を悲しんで亡命する中、Kおじさんは「この世の中の歴史を見届けることが小説家のつとめだ」と亡命しなかった。ユダヤ人の血を引いていたのに大胆なことです。さすがに人気者すぎてナチスも手を出せなかったという話もあります。

そのKおじさんが、戦後書いたのが「動物会議」という絵本でした。
あれだけ大きな世界大戦を経験してなお、世界は武器を捨てず、人間同士仲良くなれない。誰が得するから誰が納得しないとか、誰誰がいじめるに違いないから武器作りを競争するとか、人間より昔から自然があったというのに、ここは誰それのもの、他の人は入っちゃだめとか。こういうの、Kおじさんに限らず、当時の人々の大きな失望につながったのではないでしょうか?人間はいったいどうなってるんだ?こんな人間たちに、世界をまかせていいのか?

そんなやるせない憤りをぶつけたのが「動物会議」だったように思えます。

おっと、でもなんだか、それから半世紀以上たった現代のこの社会だって大差ないんじゃないの?そんな声も聞こえてきます。大戦のあとにも、311だの911だの、人間が何かを変えるきかっけをたくさんあったんじゃない?天国のKおじさんも一言あるにちがいないんじゃないでしょうか?

そう考えたのが、もうひとりのHおじさん。日本生まれ日本育ちのニポン人、終戦間際に少年時代をすごし、もうちょっと戦争が長引いたら特攻隊になっていたかもしれないおじさん。時を超え国境を超えてKおじさんの作品に出逢い、そこにあるメッセージに未来を見ました。「子供たちのために」!これなら人類がひとつになれるんじゃないか?そしてこのメッセージが音楽を通じてみんなに届いたら?

そのHおじさんの独り言をキャッチしたのが今回の仕掛け人、「流星」の2人です。そこから、この物語は始まります。

8月15日終戦記念日に

総合音楽プロデュース流星 松本MOCO 久保太郎

動物会議ができるまでPHOTO1

(注)Kおじさん=いわずと知れたドイツの児童文学の第一人者、ケストナーのことです。